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常陽リビング3月12日号掲載 弁護士・星野学のくらしの法律『認知症患者と配偶者の責任について』


認知症の夫が線路に立ち入って発生した事故について妻の責任が問題となっていますが、どういうことなんでしょうか?


この事件は、認知症の夫が線路に立ち入り列車に衝突して死亡した事故で、列車の遅れなどにより損害が生じたとして鉄道会社が妻に損害賠償を求めたというものです。

当初、裁判所は夫婦がお互いに協力し扶助する義務を定めた民法の規定を根拠に、妻は当然に認知症の夫を監督しなければならず、その監督を怠ったため事故が生じたとして、妻に損害賠償を命じる会社側勝訴の判断をしました。

これに対して最高裁は、妻の損害賠償義務を否定する逆転判決を下しました。といっても、今回は妻も高齢(当時85歳)で身体に障害もあり、そもそも一人で夫を監督できる状況になかったというケースでした。

したがって、最高裁は全面的に妻の責任を否定したわけではありません。例えば認知症の夫が何度も徘徊して出歩いているのを知っていながら放置していたような場合の事故については、妻に損害賠償を命じる判決が出る可能性もあります。

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常陽リビング2016年3月12日号

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